ガーデン ご紹介

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シシングハースト城  Sissinghurst Castle
               2012年6月1日 訪問  水色枠の写真はクリックすると拡大写真になります。

Sissinghurst

シシングハースト城に遣ってきた。都合4回目の訪問だ。 ”世界中のガーデナーの聖地”とも”イギリス人が最もあこがれる庭”とも称される。走りながらも期待感に胸は躍る。
受付の隣の展示場の建物はケント地方特有のホップ乾燥所(Oast Hhouse 写真右)だったものだ。
シシングハースト城の建物は15世紀の濠に囲まれたマナーハウスがフランス人捕虜の収容所などを経て荒れ放題になっていたものを 1930年に詩人のヴィタ・サックビル・ウェスト(Vita Sackville-West)と作家で外交官のハロルド ・ニコルソン(Harold Nicolson)夫妻が購入し、 ガーデン造りを始めたものだ。主にレイアウトなどをハロルドが植栽計画をヴィタが担ったという。 二人はガーデン造りに当たってコッツウォルズのヒドコート・マナー(Hidcote Manor)のアウトドア・ルーム方式をお手本にしたということで、 ここもレンガの塀やイチイのヘッジでセパレートされた個性的な約10個のルームがある。ルームが変わるごとに植栽が変わり、新しい発見があるという仕組みだ。 1976年にナショナル・トラストの所有となった。

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エントランスをから"Long Library"と"Main House"の間のアーチ門を潜ると"Front Courtyard"に出る(写真上右から2枚目)。
正面にタワーが聳え、高いレンガ塀と建物に囲まれた芝生の美しい中庭だ。塀も建物の壁もつる性植物が見事にクライミングしている。
写真上左はMain Houseの壁のセアノサス、羨ましくなる。上左から2枚目はアーチ門の周りのバラ、下左2枚はLong Libraryの壁のバラ、 下右から2枚目は南側の塀をクライミングするモンタナとつるアジサイで、その下には"South Border"がある。 その反対の北側の塀沿いには"Purple Border"がある。素晴らしい光景だ。人気を示す沢山のゲストを避けつつ2回りする。

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南側の青いドアー(写真上右から2枚目)を入るとローズ・ガーデン(Rose Garden)だ。塀とイチイのヘッジに囲まれた長方形の整形式ガーデンだ。 西の端には半円形のテラスがあり、素敵な形のベンチがある。後ろの塀にはクレマチスがクライミングしている。 中央にはヒドコート・マナーのロンデルと同じようなイチイのヘッジに囲まれた円形の芝のスペースがある(写真下右から2枚目)。 陽だまりのロンデルもこの2つに倣ったものだ。東の端にはオーナメントがある(写真下右)。ハロルドがデザインしたもので私好みだ。

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どこから眺めてもタワーやハウスのチムニーが絶好のフォーカルポイントになるので、気がついてみると同じような写真だが、 前景の植栽はそれぞれ違う。実に多彩な植栽だ。ローズ・ガーデンではあるが、バラよりも他の植物のほうが多いくらいだ。 それでいながら、バラが主役であることに変わりはない。ブッシュや宿根草も背が高く、厚みがあり重厚感がある。
このローズ・ガーデンからも幾つかのルームに繋がっている。写真下右から3枚目は"Tower Lawn"へ、写真下右は1932年に造られた"Yew Walk"を望んでいる。 他にも"Lime Walk"と"Cottage Garden"に繋がっている。どちらに行こうか迷うのも楽しい。

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"Cottage Garden"は"South Cottage"(写真下左2枚)の南に広がる赤と黄色を基調としたホット・ガーデンだ。色鮮やかな植栽には目を奪われる。
一般的にイングリッシュ・ガーデンといわれるところのナチュラルな植栽のコテージ・ガーデンとは趣が違う。
コテージの壁にクライミングするバラはデビット・オースチン(David Austin)の"Mme Alfred Carriere"だ。

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ガーデンの中央にフォーカルポイントの4本のイチイの木が立っている(写真下右から2枚目)。その真ん中に置かれたコンテナの植栽もホットだ(写真上右)。 ここでもタワーを入れたアングルが多くなった。艶やかな花色ばかりに目が行きがちだが、花の形、葉の色・形も様々で考え抜かれた植栽だ。 他と比べると小さなルームだが、それを感じさせない存在感がある。

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"Lime Walk"はハロルドがデザインから植栽まで手掛けたルームだという。50m余りのイチイの生垣に囲まれた細長いエリアに ライムの木(ミカン科のライムではなく西洋菩提樹のこと)を2列の並木にし、両脇はスプリングカラーが植え込まれている(写真下左)。 前回は08年の4月にブルーベルを目的に旅したのだが、このスプリングカラーを目にした時の感動が蘇える。
左から2枚目はLime Walkの西のエンドの半月形の部分のモニュメントだ。直線的になりがちなルームガーデンに、 こうした曲線を取り入れる手法はガーデンにソフトな印象を与える。
Lime Walkの東のエンドからは"Nuttery"と"Moat Walk"が平行して東に伸びている。白藤が余りにも鮮やかに目を惹いたのでMoat Walkを歩く。 白藤の前では記念写真を撮る人が多くなかなか順番が回ってこない。ここは1946年にヴィタのポエムが文学賞で得た賞金で造られたという。
Moat Walkというのは嘗ては屋敷を取り囲む濠(Moat)が通っていた場所だからだ。実際に今でも屋敷の東面と北面半分は濠が巡っている。 その濠の畔にモニュメントが置かれMoat Walkに奥行きを与えている(写真下右)。

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ガーデンの南東角に"Herb Garden"がある。いつも私にインスパイアーを与えてくれるガーデンだ。ここは藤色の藤が満開だ。 ライオン像が支えるコンテナは以前はタイムだったが、セダムに変わっている(写真左から2枚目)。
座席がハーブのベンチも以前はタイムだったが、今は矮性のカモミールに変わっている(写真右から2枚目)。「座らないでください」と控えめな表示があった。 これだけのゲストが次々座ったのでは溜まったものではないだろう。私のアイディアの手摺部分にタイムベッドを作ったベンチではその心配はない。

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果樹園(Orchard)を横切ってシシングハーストで最も有名で世界中に最も影響を与えたというホワイト・ガーデン(White Garden)に向かう。
ヴィタとハロルドは「ガーデンの半分は果樹園にしておきたい」と考えていたという。ガーデンマップを見ると丁度半分は果樹園だ。 その理由は「ミツバチにリンゴの花を利用して蜂蜜を作らせる」ためだったようだ。もちろん果実を食べ、ジュースを搾り、ジャムを作り、 サイダーを造ったことだろう。生活と共にあるガーデンがイギリス流というものだ。

シルバーリーフに囲まれて婦人像は今年も静かに迎えてくれた(写真下左 1935年からここにいらっしゃるとか)。 ホワイト・ガーデンの目玉である"Canopy"と呼ばれるパーゴラのランブラー・ローズには今年も早すぎたが、 フロックスの眩しいような白はこれだけでホワイト・ガーデンだ(写真下左から2枚目)。このランブラーを見るために何時かは7月に訪れたい。
ほかにアイスバーグも満開だ。カラー、グラジオラス、アイリス、ポンポンダリア、カンパニュラ、秋明菊、ポピー、マーガレット、エリンジウム、 クレマチス、クランベなどがスタンバイしている。グラス類も効果的に使われている。
ここがホワイト・ガーデンになったのは1950年からのことだという。それまではローズ・ガーデンだったのだ。 そして、パーゴラが設置されたのは何と1969年のことだという。ヴィタもハロルドも亡くなった後のことだ。 しかし、パーゴラの真下の置かれた壷(写真下右)は1937年からあるのだという。

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この項で年代にこだわって記しているのには訳がある。ガーデンが生き物だということ。時間と共に変わっていくということ。一朝一夕には出来ないということ。 そこに生活があるということ。ガーデニングは現在進行形だということを伝えたかったからだ。私のガーデニング哲学だ。
島根県の有名な日本庭園に行って驚いたことがある。庭に足を踏み入れることは出来ず、ガラス越しにしか見られないのだ。庭の風に触れることは出来ないのだ。 そこに人の姿はないのだ。創設者はこよなく庭を愛し、情熱を傾けたというが、その庭は今は死んでいるように見えた。

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ガーデンにはオーナメントも重要な要素だと考える。その点でもシシングハーストは最高だ。心憎いシチュエーションとバックグラウンドで配置されている。 上左2枚はローズ・ガーデンにあったと記憶している壷とモニュメントだ。
ガーデンがホワイト・ガーデンなら建物はタワーが最も人気だろう。今回も行列が出来ていた。一度上っているので今回は見送った。 どこから見ても美しいが、タワー東側の"Twer Lawn"から間近に見るタワーは迫力がある(写真上右2枚)。

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美しい草花の写真をお見せしよう。上左からホワイト・ガーデンへのゲートの一つ"Bishop's Gate"にランブラーするバラ。
2、3枚目はホワイト・ガーデンのアストランチアとセントーレアだ。右がローズ・ガーデンのオリエンタルポピー、なんともシックな色合いだ。
下は左がPurple Borderのルピナス。シシングハーストのガーデナーはカラースキムを"clever mix of pink , blues , lilacs and purples"と説く。 お手本が良いから良く理解できる。
2、3枚目はFront Courtyardの南の塀のアジサイとMain Houseの壁際のオステオスペルマムだ。 コンテナは元は違う用途だっただろうと思われるが、良い雰囲気だ。
右はローズ・ガーデンからYew Walkへのゲート付近の植栽だ。花は奥からムクゲ、バラ、アリウム、オダマキだ。カラースキムのお手本になる。

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Information
 Address  Biddenden Road, near Cranbrook TN17 2AB
 Telephone  01580 710700
 Web Site  Sissinghurst Castle

オープンの日・時間や入場料は Web Site あるいは Gardens Finder
Gardens Guideで確認ください。

「旅行記」もご覧ください。

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